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《吸血鬼について》

吸血鬼は様々な民間伝承から生み出された化物です。

有名な物は東欧、西欧ですが、エジプトや南米、中国などにも似たような吸血怪物は存在します。

現実にも、ワラキア公、エリザベート・バートリーなど吸血鬼と噂された人物は多いようです。

 

そして、その存在を決定的にしたのはフィクションでしょう。

小説家ブラム・ストカーが生み出した『ドラキュラ伯爵』を発端にして様々な小説、舞台、映画、漫画で繰り返し描かれています。

この魅力的な怪物には、様々な設定があり、観客の皆さんが『俺(私)の知っている吸血鬼と違う』と疑問をお持ちになる部分も多々あるかもしれません。

この頁では、今作の吸血鬼に当てはまる設定、当てはまらない設定を紹介します。

 

1:不老、不死である。

はい、その通りです。吸血鬼は死なないし、老いることもありません。

普通の剣や銃で攻撃しても、肉体的な損傷は受けますが、命は失いません。

損傷は、個体差はありますがほどなく回復します。

不死の王である太陽の場合、ほどなくどころか、回復は瞬時に行われます。

老いることはありませんが、成長することも、若返ことも出来ません。

幼児で吸血鬼になったものは幼児のまま不老不死に老人の場合も、その姿のまま不老不死になります。

 

2:日の光に当たると死ぬ。

これは、当てはまりません。太陽をはじめとする闇の眷属は日光で死にもしないし損傷を受けることもありません。ただ、ある理由から直射日光を極端に嫌っています。

その理由が何なのかは本編で明らかにされるでしょう。

また、にんにくも恐れるほどではありませんが、好みません。

 

3:十字架、聖水に弱い。

これは当てはまるとも言えるし、そうでないとも言えます。

彼らが嫌うのは『神への強い信仰心』であり十字架の形状ではありません。

信仰心の無い物の持つ、高価な十字架より信仰心が強い物が十字に組んだ棒の方が彼らにとっては脅威です。

 

4:鏡に映らない。

これは、その通りです。窓ガラスや鏡面加工された金属にもその姿は映りません。

イシュタルやシオンはそのせいでお洒落に困っていたりします。

ただ、なぜか写真には写るようです。

 

5:影がない

これは当てはまりません。本当は影がなければ最高なのですが。

この物語は舞台作品です……お察しください。

 

6:川や海など、流れのある水を渡ることができない。

これは当てはまりません。船に乗れば彼らは水面を移動できます。

しかし、泳ぐことは出来ません。彼らの血は人間のそれよりもずっと重いため水に浮かないのです。水に沈んだ場合、彼らは川底や海底を歩きます。

その行為自体あまり格好の良い物ではないため、好んで歩きはしませんが。

 

7:初めて入る建物には、招かれなければ入ることができない。

その通りです。所有者のいる建物に入る際、吸血鬼は招かれなければ中に入れません。

彼らが廃城や朽ち果てた屋形に住みつくのは、そこには所有者がいないためなのです。

 

8:人間の血を飲まないと活動できなくなる。

半分当たっているし、当たっていないとも言えます。

この作品の吸血鬼は、誰しも強力な魔力を持っています。それを発揮する際に『人間の血』が必要になるのです。

人間の血を飲まなければ魔力はどんどん低下していきます。

ですが、そのせいで空腹を覚えることもなければ死ぬこともありません。

また、吸血鬼が吸血鬼を噛むと、その魔力を奪い取ることができるようです。

逆に、望んで血を飲ませることにより、自分の魔力をほかの吸血鬼に分けることもできます。

 

9:吸血鬼に血を吸われると、吸血鬼になる。

当てはまりません。吸血鬼にとって人間は『食べ物』です。

人間が食べた米やパンが人間にならないのと同じことです。

ただ吸血鬼が望んだ場合、自分の血を分けることで、人間を吸血鬼に変えることができます。

ただし、それにはいくつかの条件があります。

 

10:吸血鬼が増えるルールについて。

この項目は、非常に複雑です。特に覚える必要はないのですがご理解いただいた上で舞台をご覧になると、面白さが倍増するかもしれません。

 

A:意志を持った吸血鬼は、真祖(しんそ)から数えて三代まで。

真祖とは、誰の力も借りず自力で吸血鬼になったものを指します。この物語では太陽がそうです。

真祖である太陽は、自在に吸血鬼を作り出すことができます。

太陽に作られた吸血鬼、マルス、クロノス、シリウス、イシュタル、そしてシオンの五人も吸血鬼を作り出すことができます。彼らを便宜上『第二世代』と呼びます。

第二世代の吸血鬼が生み出した『第三世代』の吸血鬼たちは、意志のある吸血鬼を作ることは出来ません。

下にまとめてみました。???は、作中の登場人物です。誰が該当するかは劇場でのお楽しみです。

 

真祖 太陽
第二世代 マルス クロノス シリウス イシュタル シオン ????
第三世代  

ガニメデ

    ???? ????

これより、真祖から遠い吸血鬼は存在しない

 

 

B:意志を持たない吸血鬼とは?

彼らは、人の形をしている単なる動く屍です。映画などでよく出てくるゾンビやグールと同じものだと考えてください。彼らはただただ人間を襲い、その肉を食べるだけの存在です。

自律的な行動は行えません。ただ自分の生み出したものからの単純な命令。

『○○を追いかけろ』とか『○○を探せ』といった単純な命令を遂行することは出来ます。

『コーラ買ってこい』ぐらいまではおそらくできるでしょうが、『犬小屋を建てろ』とか『メールで報告をしろ』という複雑命令は理解できません。

また、彼らは太陽光線や十字架、聖水などで簡単に崩壊しますし、頭部を破壊されると行動を停止します。厳密には死んでいないのですが、吸血鬼のように再生能力は持たないので死んではいないが活動できない状態でいつまでも放置されることになります。

 

前述した『第二世代』までは意志を持つ吸血鬼も持たない吸血鬼もどちらも作り出すことができますが

『第三世代』は意志を持たない吸血鬼しか生み出すことは出来ません。

また、意志を持たない吸血鬼が人間を噛むと、その相手は無条件で『意志を持たない吸血鬼』に変わります。

取捨選択の余地はありません。

 

《吸血鬼のルール》

この項目では、吸血鬼社会と、真祖が定めた吸血鬼のルールについて説明します。

 

1:真祖

他の項目でも触れていますが、一番初めの吸血鬼を真祖といいます。

彼が何処から来たのか、どうやって吸血鬼になったのか? 彼本人も知りません。

物心ついた時から、闇の中に立ち、世界を見つめていたのが、真祖です。

アダムとイブの子、カインであるとの説もありますが、それは定かではありません。

 

彼は強大な力を持っていますが、権力も富も欲していません、世界征服を企んだりはしないのです。

ただ静かな暮らしを望んでいるのですが、人間が『化物退治』にやってくるのでそれを駆逐しているだけです。

人間達は彼に戦いを挑みますが、応戦する彼には「戦っている」という実感はありません。

彼は思うだけでどんな人間も殺すことができますし、仮に核爆弾の爆心地にいてもバラバラにはなるでしょうが、死ぬことはありません。瞬時に元通りの姿で復活します。

彼を彼たらしめているのは『自分は自分である』という強烈な意志であり『誰にも所有されない』という強固な信念です。何物も恐れない、何物にも束縛されない最強の存在。それが真祖です。

 
 

2:第二世代

真祖が直接吸血鬼にした者たちです、マルス、クロノス、シリウス、イシュタル、シオン、そして

作中に増える人物がこれにあたります。

便宜上、吸血鬼と呼んでいますが、ファンタジーに詳しい方にはクロノスは死霊(レイス)シリウスは人狼(ワーウルフ)イシュタルは淫魔(サキュバス)と言った方が通りがいいかもしれません。

マルスとシオンは一般的な吸血鬼のイメージに近しいと考えて間違いありません。

 

彼らは、一般的な映画や漫画などに出てくる『ラスボス』級の化物達です。

不老不死で強大な魔力と武力を有します。おそらく一人一人が一国に匹敵するほどの強さを持っています。

が、彼らとて無敵ではありません。

『心臓に白木の杭を打つ』ことができれば殺せないまでも一定期間活動停止に追い込むことは可能です……問題はどうやってその機会を作るかですが。

普段、彼らは自分の根城にしている国で、その地域の様々な化物をその強大な魔力によって統括しています。

マルスは主に、欧州(ロシアを含む東欧から西欧諸国)クロノスは、ブリテン島(大英帝国)

シリウスは中近東アジア(思に中国)イシュタルは南米を含む新大陸。

シオンは特にどこも治めてはおらず真祖の傍でブラブラしています。

真祖はなぜかシオンを娘のように扱っており、彼女は一族のマスコット的存在です。

 

また、第二世代はいかなる手を使おうとも、真祖に打ち勝つことはできません。

『自分よりも真祖に血統が近い者には基本的に敵わない』というのも大きな決まり事です。

吸血鬼としての強さを決定するのは何よりもその『血の濃さ』なのです。

 

 

3:三つの掟。

以下は真祖が『静かに暮らす』ために定めた三つの掟です。

これを完全に守るもの都合のいいように解釈するものなど、さまざまです。

ある程度のルール破りを真祖は黙認しています。

彼は『第二世代』を所有物として扱ってはいません。

彼は彼の暮らしのために『主張』をしているだけで命令をしているわけではないのです。

 

A:妄りに人間を襲ってはならない。

これは道徳的な理由からではありません。

むやみやたらと人間を殺せばそれを人間達に発見され化物退治が始まるからです。

真祖は『静かな暮らし』を好みます。

喧噪に彩られた闘争は彼の好むところではないのです。

ただし、『食事』に関してはこれを禁じてはいません。

彼らは人間の命を奪わず、血液だけを適量摂取することもできるのです。

多くの場合それをせず、命まで奪ってしまうのですが……。

 

 

B:吸血鬼同士殺しあってはならない。

不死の者同士の争いにはキリがありません。

お互いに死なないのですからいつまでも決着がつかないのです。

その闘争はやはり『静かな暮らし』とはほど遠いものです。

よって真祖はそのことを禁じています。

しかし、第二世代、第三世代の吸血鬼には闘争を好むものも多く、しばしば小競り合いが発生してしまいます。

そのため、防衛のための闘いについてはこれを禁じていません。

 

C:妄りに吸血鬼を増やしてはならない。

吸血鬼が増えると、それだけ厄介ごとが増えます。

不老不死になったという万能感が妄りに人間を襲わせ、同族との闘争を引き起こすのです。

真祖は現在の状況を気に入っており。

これ以上新しい何かは必要ないと考えています。

仮に吸血鬼が増えた場合、マルスに命じて、あるいは真祖自らが、その吸血鬼を消滅させます。